面影…③

中編
中編

俺は待ち合わせ時間の30分前から駅の改札に立っていた。

23区といえど都心からは遠く、治安もあまり良いとは言えない街だ。

都会育ちのリナは、多分来たことはないだろう…。

俺の仕事が急に入ったせいで、リナと一緒に来れなかった。

奴らと会う店は駅前の居酒屋だ。

どうせアホの慎吾が選んだ店だろう。

俺と康太、タカシに慎吾、そして雅也の5人は大学の
サークルで知り合った。

彼らとは、互いに会った瞬間、気が合うと直感した。

大学で真面目に勉強した記憶はない。

大学内の可愛い女の子を口説いては付き合い、
飽きたら別れるを繰り返し、遊び惚けていた。

そのうち俺達は、気に入った女の子を誰が落とせるか
を競うゲームを始めた。

詳しくは覚えていないが、落とせたらポイントが入った。

中でも飛び切り美人を落とせば、最高ポイントが一度に入る。

後で集計し、ポイントが一番多い者は、翌月のデート代を
他の4人から貰えるという、しょうもない遊びだ。


毎回トップは俺か康太で、たまに雅也という感じだった。

誰かと付き合っている途中でゲームに参加するとなった場合、
そこでまた落とせたら、一度に2人の女性と付き合うことになる。

また、落としたはいいが、付き合ってみると気が合わず、
すぐに別れてしまうこともよくあった。

そんな時は、敗者復活戦となり、他の4人が再度その女の子を
落とすために競うのだ。

女の子達は本当に可愛い子だけを選んでいたので、
正直、リナよりも顔やスタイルのいい子は沢山いた。

でも俺は、誰と付き合っても本気で好きになる事はなかった。

他の4人も同じ、誰一人本気で付き合っている奴などいなかったと思う。

俺達は彼女達を無理やりベッドに押し倒したり、乱暴を振るう様な
悪党ではなかったけれど、彼女達の気持ちは、大いにもてあそんだ。

女の子達を詰まらない男達のゲームに巻き込み、飽きたらそれっきり
見向きもしなかった。

俺達5人はイケメンだの何だのとチヤホヤされてはいたが、
中身は言うまでもなく、空っぽでクズ以下だった。