時空の旅に出る㊵

長編
長編

正月が過ぎて日常の生活に戻ると、私は早速由美子に会いに行った。
由美子の家には後藤さゆりと、息子のシュン君が遊びに来ていた。


「美香、そんなに気にすることないわよ、なんだかんだ言っても
日高さんは美香の事が大好きで仕方ないんだから…。」

由美子が隼人に離乳食を食べさせながら、にこやかに言った。

「美香さんの気持ち、私も少しわかります。でもここは少し馬鹿になって、
寂しい~って抱き付いてあげたらいいんじゃないですか?」

「そ、そんな事…。」

「でも突然、美香がそんな事したら、日高さん嬉しすぎてどうにか
なっちゃうんじゃない…? ふふふ。」

「由美子ったら、からかわないで、もぉ。」


「美香さんって、ピュアな方なんですね、大好きになりました!」

「あらあら、美香も隅に置けないわね。」

「後藤さん、由美子のママ友なのが惜しいくらい、私も好きです。」

「ちょっと、あなた達なんなのよ~。」


私は可笑しくなってプッと噴き出した。
由美子も後藤さんもケラケラ笑い出した。


「ママー。今日公園でクルミちゃんが飴くれたんだよ。ほら、」

尚人がイチゴの飴が入ったきんちゃく袋を由美子に差し出した。

「どういうつもりかしらね。」

後藤さんが訝しげにそう言った。

「クルミちゃんも今度からひまわり幼稚園に行くんだって。」

シュン君がすかさず言った。

「あなた達いつの間に胡桃ちゃんとそんなおしゃべりしてたの?」

「滑り台で一緒に遊んだんだよ。向こうからきたんだ。」

「ママ達はベンチでしゃべってたでしょ。」

尚人達は交互に話し終えると、また和室に戻って遊びだした。


「結局、胡桃ちゃん本人は、尚君と仲良くしたいだけだったのかもね。」

後藤さゆりが呆れ顔で呟いた。

「そうなると、カノンちゃんもひまわり幼稚園でしょうね。」

「きっと、他の取り巻きの子供達も同じよ…。」


「なんだか複雑だわ…。」由美子が少し不安そうな顔で呟いた。

「尚君ママ、私達は一緒なんだから安心して。楽しくやりましょう!」

「そうね、ありがとう!宜しくお願いしますね。」

「こちらこそ!」


私はそんな由美子達の様子を見て、ホッとしたと同時に、由美子は私とは違う
ママ友の世界で、頑張っているんだなと感じた。

私は、気持ちを改めようと決意した。
いつまでもつまらない邪念に振り回されて、いじけるのはもうやめよう…。

私は気持ちを切り替えて、由美子の家を後にした。