トオル君は暫くの間、布団の中でモゾモゾと、私の身体を触ったり、
唇を押し当てたりしていたが、突然、布団から出てきて俯いた。
「どうかしたの…?」
トオル君は少し青ざめた顔で黙っている。
「顔色が悪いけど、具合い、悪いの…?」
「大丈夫だよ、心配しないで、ただ…。」
重苦しい空気が漂う。
「私の身体、いやだった…?」
私は絶望的な返事が来ないことを願った。
「違う…、美香ちゃんはとっても綺麗だよ。」
トオル君は、深いため息をついてから小声で言った。
「僕…出来ないんだ。」
「で、出来ないって、一度もしたことないの?」
「今までも仲良くなった女の子がいたけど…ダメなんだ。」
「分かったわ、じゃあ、私がやってあげる。」
私もまだ、そこまでしたことはなかったが、彼が困っているなら…。
「いいよ、美香ちゃんにそんな事させたくないんだ。」
「そんな事って…、トオル君の為なら私は平気よ。」
「僕、どこかおかしいのかな…、自分でもよく分からないんだ。」
私はどうしてあげたら良いのか分からなくて、ただ彼を見つめていた。
「美香ちゃん、一緒にお風呂入らない? バスタブ泡だらけにしてさ。」
突然彼が言った。
行ってみると西洋風のバスタブと、シャワー、トイレそして洗面台といった
バスルームになっていた。
トオル君と二人で、泡でいっぱいになったバスタブに浸かった。
「僕が一番リラックス出来るお風呂でなら出来るかもしれないって思ったんだ。」
「ベッドだと緊張しちゃうのね、分かったわ。」
私は泡だらけの身体で、セクシーなポーズをとったりして見せた。
でもトオル君は、クスクスと笑いを堪えた様子で見ているだけで、
全くそんな雰囲気にならなかった。
そのうち私も可笑しくなって、気がつくと彼と泡を掛け合ったり、
お湯の中に潜ったりして、ふざけながらはしゃいでいた。